天に手を、古に舞う

何度目かの清兵衛ブログ

くだんの眼

くだんのまなこの深さを知ってっがい?
おめは知らねぇべがら教えたる
あいづらは急にあらわれんだ
体は娘だげど、顔がべごなんだ
涙流しながら言わっちゃ
吾妻山の松葉で喉を傷つけろと
んなごと言ったってしゃーんめぇばい
オレあ歌うたいだ
そだごどでぎね
だがら逃げだ、ひっしで逃げだ
くだんは恐ろしい声で泣いてた
くだんのまなこの話してなかったな
逃げらんにかったんだ

毎晩さ毎晩夢でみる
深い深い緑の眼で

毎晩さ毎晩近づいて
涙流しオレを見てる

昨日の夢ではもう目の前だった
多分明日オレは生きてねぇ
だから話したんだ

月の都

蓮が咲く波無き海 月の都は今宵も平穏也
兎の身分故には、筆とること御許したもうて
友のキツネが語るは あなたが月にお戻りなさる
幾度の十六夜を過ぎれども、忘れぬ想いを

友のキツネは祭のごとくコンと鳴き

月の都に戻られた あなたをかぐや様と
呼ばねばならぬ 寂しさゆえに

薄荷咲く波無き海 かぐや様は毬で遊ばれる
従者ごとき兎故、筆とること御許したもうて
かぐや様、遊び相手欲しさに毬を差し出しなさる
幾度の新月を過ぎれども、語れぬ想いを

友のキツネは囃しのごとくコンと鳴き

月の都に戻られた あなたをかぐや様と
呼ばねばならぬ 寂しさゆえに

私などに微笑みかけるのは何故ですか
求婚を全て断ったのは何故ですか
小さき私は勘違いをしてしまいます
ですからお暇を頂きとう

それでは失礼いたしとうございますかぐや様
月の都の平穏を願う兎

だるまの面には顔が2つ

夜ごと泣き出す赤子の泣き声 達磨の面には顔が二つ
土間の良さは語り尽くせぬ 世と家紡ぐ九十九となりえ
土間の良さは語り尽くせぬ 三和土の香り広がる幻想
書生となりて文豪が夢 他人の家の土間で書を読む
書生となりて文豪が夢 才に溢るる他はよしとせず
夜ごと泣き出す赤子の泣き声 達磨の面には顔が二つ
土間の隅より コトリと音が 片目の達磨 こちらを見ておる
土間の隅より コトリと音が 片目の達磨 目がはなせぬ故 A’
達磨はコトリ 少し回転を むやみ動けぬ この世のものでなし
達磨はコトリ 少し回転を おや、達磨には 背中にも顔が
夜ごと泣き出す赤子の泣き声 達磨の面には顔が二つ
赤子の声が鳴り響く オギア、オギア、オギア、オギア、オギア
赤子の声が鳴り響く オギア、オギア、オギア、オギア、オギア
リンと鈴が鳴り響き、コトリと頭が落つれば
気づけば私が達磨だった
夜ごと泣き出す赤子の泣き声 達磨の面には顔が二つ
まるで正しい姿かのようだ 達磨で土間を見守りて
夜ごと泣き出す私の泣き声 私の面には顔が二つ

花の都

優しい音に囲まれて あぜ道を行く花嫁行列が
少年は姉を遠くから眺め 鳥居を超えて花嫁は進む
逢魔が時が迫る時 姉は婿の家の敷居を跨ぐ
ふて腐れる少年は、庭で遊びふとそれに気づいた
藪の中を 通り抜けると 紫陽花畑
そこで狐がコンと鳴く
花の都は、誰もが望む 花の都は、、、

柔わい音に囲まれて 少年は花畑に横たわる
クツワムシがウマオイが 奏でる音楽に身を委ねる
うつらうつら 微睡むころ 日が沈んで
そこで狐がコンと鳴く
花の都は、誰もが望む 花の都は、、、
花の都は、誰もが望む 花の都は、、、

少年は姉想ふ なぜ僕を置いていくのかと
少年は姉想ふ あなたの思い出はどうすればと
少年は姉想ふ ただありがとうと
少年は姉想ふ あなたの幸せだけを願うと
気づけば狐は消えていた

花の都は、誰もが望む 違うそうじゃない、
花の都は、僕らが望む 誰もがじゃない 僕が
花の都は、僕らが望む 僕が一番、、、

ブリキの金魚がゆうり、ゆうり

流るる川の両側 立ち並ぶ古家は時を忘れ
水面の枯れ葉が何かを待つ 街灯だけがただ不気味に

太鼓橋に飛沫が跳ねる 音なく川下より登るそれは
鱗は様々に塗られ 尾は、水草の中、魚が揺れる

ブリキの金魚はゆうり、ゆうりと止まりて
木の葉の周りを回るるは

踊る金魚は皆も誘う 水門から水底から 集まる
あれよあれよと集いして 川一面赤赤赤 染まった

ブリキの金魚はわらり、わらりと集まりて
互いの周りを回るるは
ブリキの金魚はかうり、かうりとぶつかれば
木の葉の前で止まりて

川のそば

時間だよ 門限の時間
カラスがさ カラスが鳴くから
帰ろうよ 帰ろうよ 僕と
帰ろうよ 帰ろうよ 僕と
今日ずっと 君を見ていて
すごくさ すごく楽しかったから
帰ろうよ 帰ろうよ 僕と
帰ろうよ 帰ろうよ 僕と
川の中

帰ろうよ 帰ろうよ 川から手招きする僕の手を掴むだけだよ
帰ろうよ 帰ろうよ 必ず連れて行くからさ
カエロウヨ カエロウヨ
カエロウヨ カエロウヨ 水の中 沈む

泣いてサラバ

孤独の理想描いてどこへともなく歩く
愚か者

行き先は?と聞かれたら「海の底へ」と答える
怠け者は旅をする

雨が肩を濡らして
雪が踝を濡らして 
太陽が背中を濡らす 
こんな日に

泣いてサラバ 昨日離れた君のいない町よ
泣いてサラバ あえて叫び喘ぎ 流す涙を 

下らないと捨てた夢再び見ようとはしない 
幸せ者

億分の一に捨てられて夢を作ることを止めた
素敵な者は旅をする

雨が肩を濡らして
雪が踝を濡らして
太陽が背中を濡らす
こんな日に

泣いてサラバ 昨日の別れで流せたらよかった
泣いてサラバ 僕の目から頬を濡らしてく涙が

泣いてサラバ 昨日出なかった嗚咽を殺して 
泣いてサラバ 昨日出なかった涙を拭いて 
泣いてサラバ 帰ってきたときも何も変わらないだろうだけどサラバ ただ悔しさを月に例えて