理不尽な暴力
彼女は非常に焦っていた。
このままではまずいと思っていた。
ちらと足を見ると血が流れてきている。
別に彼女が何かしたというわけではない。
彼女を見るなり、いきなり殴打されたのだ。
危害を加えてきた男は、非常に興奮しているようだ。
わけの分からない暴言のようなものとともに、怒りをぶつけて来る。
目は充血しており、まるで親の仇でも見ているような顔だ。
逃げなければと思う彼女は相手から少し距離を取る。
同時に彼の罵声や動作から、襲ってきた理由を理解しようとするが、興奮しているからか何もつかめない。
また、彼女自身に襲われる覚えもない。
どこかで会ったのだろうか、、、?
そういえば、昨日の晩にどこかで見かけた気がするが、気のせいかもしれない。
とにかく逃げなければと思った彼女は、一縷の勇気を振り絞り、勢いをつけて走り出した。
振り返ると、棒状の何かで地面を打ち付けた後の男が見えた。
あぶなかった、、、!
二撃目を放っていたのだ。間一髪というところだろうか。
大丈夫、、、足には自信がある、、、!逃げ切れる、、!
動かない足を庇いながらも、必死で走った。
小柄な体を活かし、偶然にも見つけた隙間に入り込もうとした時だ。
急に視界が真っ白になる。
と、同時に体中に激痛が走り、そのショックから彼女は息絶えた。
男はゆっくりと近づき、亡骸をしげしげと眺めた後、彼女の体に新聞紙を被せ呟く。
「百足(むかで)の足って100本ないんだ、、、」