タバコとメロン
今日話すのは彼の話。
彼の部屋には、いくつかの必要最低限の生活必需品しかない。
その部屋の中で、真ん中にある背の高いテーブルが唯一特色を感じるもの。
テーブルの上には必ずメロンと灰皿が置いてある。
オレはタバコとメロンさえあれば生きてい行けると言う。
変だと思う。
メロンは、食べるわけじゃないから当然腐っていく。
灰皿が一杯になるのと、メロンが腐る周期が全く一緒なことが粋だと言う。
彼が部屋でする事と言えば、タバコを吸うこと、メロンを眺めること、 あとはメロンの網目をなぞってみたり、メロンの絵を 描いてみたり。
そんな彼は先月どこかへふっと消えてしまった。
消える前、しきりに「メロンは地球だったんだ」と友達に言っていたらしい。
その友達も彼の話を理解できなかったんだ。 到底私に理解できる由もなし。
地球とメロンの何が似ていたのだろうか。