希薄な自己
あぁ、そうなんだよ。
よく言われるけど、オレさ、自分に興味があんまり無いみたいなんだよね。
いつのまにか怪我したりしてるんだけど、その時は、ああ怪我したか、と思うくらいでさ、 あとで傷跡に気づいて、あれ、この傷なんだっけっておもったりするんだ。
よくさ、強い人間とか、弱い人間って言葉が使われるけどさ、 あれって自分に興味を持てない人が強い人間って言われるんじゃぁないかな。
オレはそう思うよ。
お前みたいに臨床のような、目に見えないもんよりも、外科医を選んだのも、オレはそうだったのかな。
あんまり見た目や数値にならんもんはいけすかねぇんだよな。
さっき、お前は希薄な自己の持ち主だって表現してたけど、そうだな。
希薄なんだ。
いい表現かもな。
自分に自信がないって言えるやつなんかは、まだ自分に興味があるから言えるんだ。
ある意味そんな自分が好きなんだな。
でも、自分に興味のない、いや、強い人間と言おうか。
強い人間は、弱い人間よりもその部分が圧倒的に欠落してると言えるな。
でも、そんな強い人間だって弱い人間と同じくらい沢山いるんじゃあないかね。
情報を知ったかぶりしなきゃあ生きてけねぇ世の中だ。
自分の優先順位は下がっていくんじゃないかい。
そうなったら、決まりきった会話ばかりで、なんだかロボットと会話してるみてぇになるのかな、はは。