天に手を、古に舞う

何度目かの清兵衛ブログ

黄虚雨

やあやあ、これはこれは

わざわざこんなとこにおいでなすってぇ

 

おや、外は雨じゃあないのかい

いやいや、何も遠慮はいらねぇよぉ

 

お前さんとの仲じゃあないか

 

ところでこんな話を知ってるかい?

 

雨ってのは水だよな

水にも色んな種類があるんだ

 

いやいや、いつものように、「真空」の定義だとか、音の歪みが何の正弦波に対しての割合だとか、そういうくだらない議論をしたいわけじゃあないんだよ。

 

黄虚雨の話さ

黄虚雨って言葉ぐらい聞いたことあるだろう?

 

なんだい、知らねぇのかい?

学術本とは友だちになっておいたほうがいいぜ

 

黄虚雨ってぇのは、その名に付く漢字の通り硫黄が含まれるのさ。

といっても、ほんの数μ程度。

別に毛髪に影響はないさ、心配するなよ。

 

ただ、硫黄といえば、いわゆる禿山によくある物質だ。

禿山なんかに行く趣味のやつはいねぇが、職業として住んでるやつはいる。

タコさんさ。

 

硫黄ってのは、死者をよびやすいのさ。

 

だからな、今日みたいな空が黄色みがかった時の雨は気をつけろよ。

 

たまにさ、ずぶ濡れの女がじっと立ってる姿を見かけたことはないかい?

おお、さっき見たってか。

ははあ、相変わらず運が振れる奴だな。

 

あいつらは、死者に会おうとしている、もしくは会っている最中の奴らさ。

 

別に見たってどうってことはないが、目だけは合わせちゃあ行けねえ。

もし、会っている最中の奴だったら、連れて行かれるからな。

 

お、どうした、もう帰るのか。

 

なんだい、これから飲もうって時に急いで帰るやつがあるかい。

 

まぁ、じゃあ握り飯だけでも持っといてくれ。

 

ちゃあんと家で食べろよ。

塩気が多いからな。

 

 

 

 

 

夜泣き子と座敷童子(未完成)

てんてんてんとて 歌う童は
障子の影しか 生きられぬ
りゃんりゃんりゃんとて 笑う童は
座敷の隙間に いざのうて 
儚き命を 悟りして
どちらを摘むも お前次第

そもや 夜分遅くお集まり 
今宵 語る話は 座敷童子
我がが 赤子の頃 夜泣き子也て
何処(いずく) より聞こゆる  歌はあやし 
座敷童子は なんのため
夜泣き子相手 歌うのか 

さては ある日ある時(じ) 虎の刻 
やいや やいや泣くは 我故に
わらべ 歌の先に 影絵見えりて
障子 隙間見るに 呆とした
座敷童子は なんのため 
夜泣き子相手 歌うのか 
隙間の世界に 魅せられて 
夜泣き子誘われ 影となりて 

座敷童子は 夜泣き子に 
そっと手まりを 差し出すに 
隙間の世界に  魅せられた 
夜泣き子相手に  フワと笑う 
夜泣き子相手に  フワと笑う

錦のお狐さま(未完成)

錦のお狐様はずっど見でる
錦にはよ、天の遣いのお狐様がおっぺしだ
こないだよ、白銀(しろがね)の社に参ったどきだ
いづも朽ちた柳行李に青い芥子の花をくっちぇやんだ
そん日はあるってかえっぺどおもで

ひたひたと後をついてくる何か
ずうっとついてくるが、山を降りるとけはいが消えた
お狐様がみまもってくっちゃのかと思った
んでもちげーんだ

今でもさ今でも聞こえんだ
理不尽だ理不尽だと嘆いても
今でもさたった今でも聞こえんだ
どこまでもそうどこまでも

だって理不尽じゃねぇか
俺はなんもしてね
あ?あすこの手招きする女はなんだ?

くだんの眼

くだんのまなこの深さを知ってっがい?
おめは知らねぇべがら教えたる
あいづらは急にあらわれんだ
体は娘だげど、顔がべごなんだ
涙流しながら言わっちゃ
吾妻山の松葉で喉を傷つけろと
んなごと言ったってしゃーんめぇばい
オレあ歌うたいだ
そだごどでぎね
だがら逃げだ、ひっしで逃げだ
くだんは恐ろしい声で泣いてた
くだんのまなこの話してなかったな
逃げらんにかったんだ

毎晩さ毎晩夢でみる
深い深い緑の眼で

毎晩さ毎晩近づいて
涙流しオレを見てる

昨日の夢ではもう目の前だった
多分明日オレは生きてねぇ
だから話したんだ

月の都

蓮が咲く波無き海 月の都は今宵も平穏也
兎の身分故には、筆とること御許したもうて
友のキツネが語るは あなたが月にお戻りなさる
幾度の十六夜を過ぎれども、忘れぬ想いを

友のキツネは祭のごとくコンと鳴き

月の都に戻られた あなたをかぐや様と
呼ばねばならぬ 寂しさゆえに

薄荷咲く波無き海 かぐや様は毬で遊ばれる
従者ごとき兎故、筆とること御許したもうて
かぐや様、遊び相手欲しさに毬を差し出しなさる
幾度の新月を過ぎれども、語れぬ想いを

友のキツネは囃しのごとくコンと鳴き

月の都に戻られた あなたをかぐや様と
呼ばねばならぬ 寂しさゆえに

私などに微笑みかけるのは何故ですか
求婚を全て断ったのは何故ですか
小さき私は勘違いをしてしまいます
ですからお暇を頂きとう

それでは失礼いたしとうございますかぐや様
月の都の平穏を願う兎

だるまの面には顔が2つ

夜ごと泣き出す赤子の泣き声 達磨の面には顔が二つ
土間の良さは語り尽くせぬ 世と家紡ぐ九十九となりえ
土間の良さは語り尽くせぬ 三和土の香り広がる幻想
書生となりて文豪が夢 他人の家の土間で書を読む
書生となりて文豪が夢 才に溢るる他はよしとせず
夜ごと泣き出す赤子の泣き声 達磨の面には顔が二つ
土間の隅より コトリと音が 片目の達磨 こちらを見ておる
土間の隅より コトリと音が 片目の達磨 目がはなせぬ故 A’
達磨はコトリ 少し回転を むやみ動けぬ この世のものでなし
達磨はコトリ 少し回転を おや、達磨には 背中にも顔が
夜ごと泣き出す赤子の泣き声 達磨の面には顔が二つ
赤子の声が鳴り響く オギア、オギア、オギア、オギア、オギア
赤子の声が鳴り響く オギア、オギア、オギア、オギア、オギア
リンと鈴が鳴り響き、コトリと頭が落つれば
気づけば私が達磨だった
夜ごと泣き出す赤子の泣き声 達磨の面には顔が二つ
まるで正しい姿かのようだ 達磨で土間を見守りて
夜ごと泣き出す私の泣き声 私の面には顔が二つ